現在、糖尿病の最も新しい薬としてはSGLT2阻害薬があります。基本コンセプトとしては血液中の糖を尿で体外に排出させてしまうというものです。USAのLexicon社はそのコンセプトを強力にした経口新薬を開発しているそうです。
Lexicon社は2016年9月9日に腎臓で糖を再吸収させるタンパク質を阻害する経口薬「sotagliflozin」について1型糖尿病患者に対する試験データを発表しました。この新薬は新規性・有用性が高く、化学構造も従来の医薬品と基本骨格から異なり、従来の治療体系を大幅に変えるような独創的医薬品だそうです。
<画像はイメージです>
試験では従来のインスリン療法に加えて「sotagliflozin」を投与することで24週後にHBa1c値が0.43~0.49の低下が認められたとしています。
同社は「この薬が承認されれば1型糖尿病治療においてインスリン療法に追加する初の経口薬となる」と述べています。
腎臓には不要なものをろ過して尿として排泄する働きがありますが、その際、体に有益な成分は尿から再吸収して血液中に戻します。
ブドウ糖を再吸収する時に働くのがSGLT1とSGLT2というタンパク質の一種です。
SGLT1は小腸など消化器や心臓、肺、肝臓、腎臓の近位尿細管に存在しSGLT2は腎臓の近位尿細管を中心に存在します。
腎臓でろ過されたブドウ糖は尿中に排泄されますが尿が近位尿細管を通るときSGLT2によって90%SGLT1によって10%が再吸収されます。つまり普通糖はすべて再吸収されて尿中には排泄されないのです。
糖尿病になるとこのSGLT2が4倍にも増えることが分かっており、糖の再吸収は3倍になるといわれています。
それゆえに血糖値が必然的に高くなるのです。
最近話題にされるSGLT2阻害剤はSGLT2の糖の再吸収を邪魔して糖を尿に排出させ、血糖値を下げる薬なのです。
Lexicon社の開発した「sotagliflozin」はSGLT1と2の両方に作用して阻害する薬剤です。
1型糖尿病の治療において問題になるのが重度の低血糖なのですが
同社は一連の試験結果により「sotagliflozin」は重度の低血糖を増やすことなく有意かつ臨床的に意義のあるHbA1c値の低下が認められたとしています。
同社では今後臨床試験を重ねて2型糖尿病に対する有効性を証明していくそうです。
年々、糖尿病の新薬が世界中で研究開発されそのうち今までとは一線を画すようなコンセプトの薬が開発され糖尿病自体が消滅する日が到来するかもしれません。
しかし2型糖尿病の予防と治療は今のところ節制と運動に勝るものはないでしょう。